This is “海辺“
Since: 6/10/03 12:41:45 PM JMT
海辺
三日月の形をした砂浜が、ずっと、向こうまで続いている。
吹き寄せられた砂が、丘になり、海浜植物が所々にコロニーを作っている。
きれいとは言い難い砂が、ただ単に吹き寄せられ、そこに3月の海が、浪を寄せている。
時々交じる透明な硝子の粒が、照り返す新雪のように光る上を、彼は歩いている。
古びた防波堤は、時々打ち寄せる強い浪に、揺らぐような感覚を与えてくる。
風が、時々、ゴウッとうなりを上げ、その度に体温が少しずつ削られる。
どうやら、彼はずっと向こうまで、行ってみるつもりのようだ。
ワン!
いきなり、犬が吠える。
何やら一言呟くような口の動きが見え、次の瞬間には犬に引きずられて、突堤にある灯台の方へと、駆けて行く。
犬の散歩のコースになっているのだろう。
所々で、犬が何かを見つけ、主人が引っ張る。次の瞬間には、犬が主人を引っ張り、又、何を見つけたのか立ち止まり、主人に引っ張られる。
彼の姿が消えた。
打ち上げられた難破船の蔭に、入ったのだろう。
陽が射し、背中がほんのりと暖かくなる。
そろそろ、暖かい飲物の時間のようだ。