This is “文学講義“

Since: 7/25/03 6:43:42 PM JMT

 

 

文学講義(文章のタイトル)

 

 

テーマ

              しげみに潜む二人の子供

 

              ノート

                            『ちひろの絵のような

                            『悪ガキ共』

 

 

 

テキスト ボックス: ちひろの絵のような

秋の雨が肩を濡らしていた。前髪が雫を垂れ、その雫が鼻の脇を通り、顎から滴り落ちる。
私は秋雨の街を散歩していた。大都会の中の、管理された自然が残る一角。人は、自然を破壊し、自分達の都合の良いように形を変え、それでもなお、自然が残されていると自分達を欺瞞しようとする、と、ある人物が描写した、公園である。
別に哀しいことがあった訳ではない。散歩が私の日課なのだ。
そろそろ帰ろうかと考え始めた私の足を留めたものがある。低木の樹の下に、雨の雫よりも濡れた光りを放つ眸が、四つ。フードつきのコートで覆った身体を寄せあう二人の子供。二人の前の地面にはカエルもいなければ、水たまりも無い。
私は、ふと興味を抱いた。
立入禁止の標識を無視し、芝生を横切り、適当な木の下で、私も彼らの真似をして、雨宿りすることにした。
服を侵した雫が肩口を濡らすまでの時間で、彼らが見つめているものに気付いた。彼らの瞳が見つめているのは、隣にいる友達でも無く、落ちてくる雨でも、湿り気を帯びた街角でも、彼らに気付かずに通り過ぎる通行人でも無い。
私は彼らに興味を無くした。
彼らは私が立ち去った後も、あそこに潜み、凝とナニカを見つめていたに違い無い。
多分、次の雨の日にも。

終り
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テキスト ボックス: 	トムソーヤ風に

 爺さんは、二人が境界にあるしげみから、爺さんのイチゴ畑を狙っているのに気がついていた。
 「まったく、あのガキ共ときたら、」と、爺さんは何時ものセリフを吐いた。
 「こっちが何にも知らないと思ってやがるな、まったく、ワシのガキの時分にゃ、もう少し頭の良い手段で、スイカやトマトやイチゴを手に入れたもんだが、近頃のガキと来た日にゃ、まったく、馬鹿の一つ覚えしか出来やしねぇ、ろくなもんにゃならねぇぞ、ったく。」
 爺さんは、ポーチのロッキングチェアに腰を下ろしたまま、二人の出方を探ることにした。
 二人は相変わらず、しげみから動こうとはしない。
 爺さんはじれったくなってきた。
 「まったく、来るなら来るでさっさと来ればいいじゃねぇか! なにやってんだが、最近のガキは。」
 ロッキングチェアとパイプがせわしなくなってくる。それでも、二人は動かず、凝と潜んだまま、である。
 「ははぁ、さてはワシが昼飯で小屋の中に入る隙を狙うつもりでいやがるな。だったら、こっちから仕掛けてやろうじゃねぇか。」
 爺さんはパイプをくわえたまま、よっこらしょっと腰を挙げ、痛む足を引きずり小屋のドアへと向かった。
 ガサッ、っとしげみが揺れる音がした。爺さんが振り返ってみると、二人の姿は無い。ドア口で振り返った爺さんは二人の姿を探した、が、影も形もなくなってしまっている。
 「ワシんとこじゃなかったのか。」爺さんは独言を吐き、静かにロッキングチェアに腰を下ろした。
 パイプから、プカリとドーナッツ型の煙りが一つ、良く晴れた風の無い空へと上がっていった。

 終り
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


(End of Contents. )