This is 寓話“預言者の寓話” “The Foreteller

テキスト ボックス: 預言者の寓話

 あるところに、未来を見通す能力をもつ男がいた。
 人々は、彼の言葉に耳を傾け、災難を避け、繁栄を求めた。
 やがて彼の評判は広がり、彼の能力を信じるものたちが段々と増えていった。
 やがて、彼の言葉は、彼の住む地方を左右するまでになった。
 国王が彼の噂を聞き、国王の身近に置き、彼を重く扱うようになった。
 しかし、国王が見るところによると、国王が彼の噂を耳にするようになってから、かれは予言することを忘れたようにみえた。
 国王は、かつての彼の予言の能力を惜しみ、予言をするように、命令した。
 かつての預言者はこう言葉を返した。
 「賢き国王よ、私の予言はあまりにも信じられあまりにも広く伝わってしまいます。私は、今は私の行動を慎まなければならないのです。」
 国王は、なおも彼の予言を欲しがった。
 かつての預言者はふかいため息をつき、やがて絶望したかのような苦悶をその額に浮かべて、悲しげにいった。
 「国王さま、これがあなたの為に働く最後の仕事になりましょう。この国は強大な隣国により、占領され、民は艱難と辛苦の時代を迎えることになるでしょう。」
 そう言い残すと、預言者は自ら自らがまとっていた大臣の衣を投げ捨て、かつて住まいとしていた荒野へと旅立った。
 国王は、彼を信じているが故に恐れおののき、軍備に力を入れるよう後任の大臣に命令すると、病に伏せてしまった。
 預言者の住む国の異変は直ぐに、隣国にも伝わった。預言者が大臣の職をすて野に帰ったこと、国王が病にふせったこと、そして、預言者が隣国によって預言者の国が侵略されると予言したことさえも。
 やがて、予言が実現し、預言者の住んでいた国は長い困難の時代を迎えることになった。
 その後、預言者の噂を知るものはいない、ということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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